キミに、愛と思いやりを
あの女の子は、あたしが見ていたことを仙谷くんに話したのだろうか。彼女にとって、あたしは知らない人なんだから、間違いなく変な風に思われただろう。
家のドアを開けて、あたしは中へ入った。
「ふぅー。た、ただいまー……」
「おかえり。あら、ずいぶん疲れてるみたいね」
出迎えたお母さんが不思議そうな顔をして言った。
「ちょっと走ってきたからね、運動のために」
あたしは、そう笑ってごまかすしかなかった。お母さんは、仙谷くんのことを知らないんだから。
「そ、そう……。別に走る必要はないと思うんだけど」
お母さんがそう思うのも無理はないか。普段は、そんなに走らないんだから、おかしく思うことだって当たり前だ。
「そうだね。次は、無理しないようにするからさ!」
あたしは、なんでもないという風に笑ってから自分の部屋に行った。