キミに、愛と思いやりを

「ま、まさかここで会えるとは思わなかったなぁ」



たじたじになりながら言うあたしに、



「僕もだよ。ここで小園さんらしい人は見かけなかったから」



と、仙谷くんは笑った。


全然あたしの変な話し方に気にしないでいてくれるのは嬉しいんだけど……。


やっぱり仙谷くんは下校中に、あたしに見られていたことに気付いていなかったのか。



「仙谷くん、帰り道はいつもここを通るの?」



「ここを通っても帰れるし、今日はこの帰り道を使おうかなってたまたま思ったんだよ」



よりによって今日が、その『たまたま』なのか……。



「へえ、そうなんだ……」



そう言っている間に冷や汗が、あたしの額から出てきた。



「だから、いつもはこの帰り道は使ってないから小園さんと会うことがなかったんだね」



「そうだねー……」



ダメだ、彼と会えて喜ぶべきところなのに、全然喜べない。




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