キミに、愛と思いやりを

「あれ、違うんだ。好きな人がいるって言ったら、しつこく聞かれるだろうから、ああ言うしかなくてさ」



決まり悪そうに笑った仙谷くん。



「えっ!」



あまりにも予想外な答えが出てきて、あたしの口からは太い声が出た。


確かに、『好きな人がいる』と聞かれたら誰なのか気になりすぎてしつこく聞いちゃいそうだけど。


告白を振る時に、仙谷くんみたいに『彼女がいる』と言って、そのあと『違う学校にいる』と付け足したら、知っても意味がない。


だから、そういう方法を使っていたのか。



「だから、『彼女がいる』というのは嘘」



あたし、そんな単純なことで仙谷くんを疑っていたんだ。


大反省だよ。



「で? 今日、何するかわかってる?」



「これでしょう?」



あたしが、ポケットから取り出したのは『11月2日』と書かれた小さな紙。



「まだ大切に持っていてくれてたんだ」



この一言で、あたしの胸はキュンと音を立てた。




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