キミに、愛と思いやりを

仙谷くんの庭にチューリップの球根を植えたあと、今度はあたしの庭に球根を植えた。


もうオレンジの空に、金色の玉が浮かんでいるみたい。



「さっきも言った通り、僕には彼女がいないんだよ」



気がつけば、仙谷くんも一緒になって夕陽を眺めていた。


あっ、そういえば。
チューリップの球根を植えようと約束をした時も、こんな空だったっけ。



「そう、なんだ……」



ところで、なんで仙谷くんは彼女がいないことを2回も言ったんだろう。


今の仙谷くんの気持ち、全然分かんないな。
……もしかして、周りに恋人がいる人が多すぎて気にしてる?



「別に恥ずかしいことじゃないと思うよ。あたしだって、今彼氏いないもん」



「僕も恥じているわけじゃないんだ。それに……」



「それに?」



「今、告白するつもりなんだ」



あの時_____球根を植えようと約束をした時のように、決まり悪そうにいう仙谷くん。



「今?」



「小園さん」



突然、仙谷くんは姿勢をあたしに向けてきた。



「僕、小園さんの積極的なところが好きです。僕と付き合ってください」



「あたしも、あの頃から仙石くんが好きでした」



「嬉しいよ。あの時と、気持ちが変わっていなかったなんて」



あたしの目から涙がぽろっと出てしまい、仙谷くんの笑顔がにじんでいる。




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