キミに、愛と思いやりを

けれども、付き合うかと言われても、あたしは彼と親しくない。
親しくない人を彼氏にする訳にはいかない。


ここは、素直に自分の気持ちを伝えよう。



「ごめんなさい! 恋人にはなってあげられないです。でも、卒業しても忘れないから」



あたしは頭を下げて言った。
卒業は、まだ先のことだけれど「ごめんなさい」の一言のみよりは、ましだと思った。なるべく、傷つけるようなことはしたくない。



「そうか。分かったよ」



宇野くんが、落ち着いた声で言ってくれた。



「それで充分だから気にしないで。ありがとう。おずおずとした感じじゃなくて、はっきり言ってくれて。それがいいんだよ」



でも、本当にすごいよ。
あたしだったら、こんな感じの告白なんてできない。



「じゃあ、俺は部活あるから。もう行くね」



宇野くんは、悲しそうな表情を見せることなく、教室を出て行った。




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