キミに、愛と思いやりを

宇野くんが去ってから、10分以上経った後、あたしはようやく我に返って、教室を出た。


そうだ。気分を晴らすために、いつもの花屋に行こう。夏に育てる花も、同時に決めようかな。


あたしが学校を出るところでは、とっくに部活は始まっていた。
あたしは園芸部だけれど、今日は活動なしなので、普通に下校するのだ。


花屋とあたしの家の距離は、遠くないので、ウィンドウショッピングでちょくちょく行くことがある。


花屋では、もう既に夏の花の種が置いてあった。



「何にしようかな……」



まだチューリップが散らないので、今決める必要はないけれど、種を見るだけでも楽しいことだ。


あたしがあちこち目を動かしていると、学ランを着ている人を見つけた。
気づかれないように近づいていくと、あたしが通っている学校の制服と一致している。


穏やかで優しそうな人だ。



「こ、こんにちは」



あたしは、その人にさらに近づいて話しかけてみると、



「あ、こんにちは」



と、彼も挨拶を返してくれた。




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