キミに、愛と思いやりを
「今日は助かったよ、小園さん。本当にありがとう」
家に帰ろうとすると、宇野くんは少しの間送ってくれた。
「いいの、いいの!」
「それに……なんかごめんな」
「なんで、謝るの?」
思わず、あたしは瞬きをした。
宇野くん、あたしに何か謝らなきゃいけないことなんかしたっけ。
「いや……。嫌だったかなと思って」
「嫌って……何が?」
「あいつらに『お姉ちゃん』って呼ばれんの嫌かな? ごめん、俺が勝手に……」
言葉を詰まらせながら、宇野くんは言った。
「ふふっ、あはははっ」
なんだ、そんなことだったの?
謝る理由が可愛すぎじゃない?
「あっ、ごめんね。そんなこと悩んでたんだって思ってさ。あたし、全然そのこと気にしてないよ。あたしは1人っ子だから、弟ができたみたいで、むしろ嬉しいし! あっ、本当は宇野くんの弟だけどね!」
「そっか、なら良かった。俺ん家、男3兄弟であいつらには姉ちゃんがいないから。もちろん俺もなんだけどね。あいつらも、きっと小園さんみたいなお姉ちゃんができて嬉しいはずだし」
そういえば、確かに宇野くんの家に女の子はいなかったね。
「母ちゃんがいたら、母ちゃんも嬉しそうだしなぁ」
口元に笑みを浮かべながら言う宇野くん。
それを見ると、ああ、家族を大切にしてるんだなあ、と思ってしまう。