アンバランスな苦悩
「最低男だわ!」

マコが大きな声で言った

スミレは流れ落ちそうになる
涙を必死にこらえているようだ

「それでも
きちんと話をしたい

瑛ちゃんと話をしないと
私の気持ちは
落ち着かない」

「子供ね

物わかりの悪い子って
私、嫌いだわ」

桜さんが
冷たく言い放つ

「俺も話はないよ
見たとおりだから」

マコが睨む
憎しみの籠った目で
俺を見ていた

俺は怖くない

桜さんの
反撃を考えるほうが
怖い

今日の午後
校庭で
ナイフを持って
スミレの命を狙っていた

そっちのほうが
俺は怖い

だから
俺は
スミレにもマコにも
光汰にも

話すことは何もない


桜さんに新しい男ができて
俺から興味がそれるまで

俺は
黙って
待っているしか
できない
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