アンバランスな苦悩

新しい男

俺の体に残った傷跡が一つ増えた
これで三つ

腹と肩と腰

服で隠せる部分で良かった
服を着ていれば

誰も俺が怪我をしているとは
わからないし

報告する必要もない

救急車で運ばれた翌日には
普通に
学校へ
出勤した

けが人が病人の看病をした



放課後の校内を歩いた

白衣を着て
静かな廊下を散歩する

散歩コースには
必ず
スミレの教室があった

友人たちを楽しそうに
話をする
スミレを見る

それだけで心が癒される

汚れた体と心を
ほんの少し

洗浄してくれる
気がした

今日も
廊下を歩く

スミレの笑い声


そして…
男の声がした
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