アンバランスな苦悩
「小泉って
心が広いな~

意外と
生徒の味方だね」

杉田の声が耳に入った

俺はちゃんと
できていた?

保健医らしく
振舞えていた?

嫉妬心を隠せたか?

ズキっ

また腰の傷が痛んだ
もう抜糸も終わったのに

俺の傷は
心と連動しているようだ

「先生、今何時?」

スミレが声を投げてきた

俺は腕時計を見る

足を止めて振りかえった

「5時半だけど?」

「うち6時が門限なんだ
駅まで送ってよ」

「スミレちゃん
先生に失礼だよ」

「どうせ車でしょ?」

スミレの勝気な目が
俺の顔を見ていた

俺に嫉妬してもらいたいわけ?

俺は絶対に
心を乱さない

大丈夫
保健医 小泉瑛汰として
駅まで送ればいいんだ

「今回だけだからな

次回は時間をちゃんと見て
いちゃつけよ」

「わーい」

感情のない笑顔で
近づくと
スミレは
俺の腕に絡みついた

「スミレちゃん?」

杉田が驚いた声をあげる

「杉田も
駅まで送るよ」

スミレが
絡みついた腕に力を入れた

スミレの考えていることくらい
わかっているさ

二人きりになって
話がしたかったんだろ?
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