アンバランスな苦悩

放課後

「今日のお菓子はなんでしょう?」

井上が明るい声で
保健室に入ってきた

「毎度毎度
俺が買ってくると思っているのか?」

「思ってるよ
だって働いているんだから
金持ちじゃん」

「金なんか持ってねえ」

「よく言うよ
独身男性が!

お小遣い身分のうちらより
金持ってるでしょうが」

「菓子なんか
食ってないで
働け、女子高生!
勤労女子になれ」

「嫌だよ
女は楽して
男が稼ぐ」

「男女平等じゃねえのかよ」

「こういうときは

平等でなくていいの」

「我がままな女だな」

ひとしきりの話が終わると
俺は机から

酢イカを出した

「飲み屋かよ!」

「食わないなら
持って帰る」

「食うよ」

井上は俺から酢イカを取り上げると
長テーブルに置いた

「はい、お金
今日はすみれもいるから
五人分のジュース代ね」

井上は俺に手を出す

「またかよ!
飲み物くらい
自分で払えよ」

「他の菓子は買ってきてるんだ

飲み物くらい出したって
いいじゃん」

「毎日なぁ…
飲み物代っていったって
馬鹿にならねえぞ」

「いいじゃん
独身男性!

貢女もいないんだから」

「失礼な生徒だよな
本当に」


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