魔法の使い方
「店に寄るのは仕事に入らねぇが、迷子を保護者の元に送り届けるのは一応警備隊の仕事に含まれるからな」

 迷子の子供扱いされたのが気に入らなかったミーナは、なんとか言い返そうとする。

「元はというと貴方達の職務怠慢からこうなったのよ。泥棒を追いかけてたら、こうなったの!」
「無理言うなよ。起こった事件を取り締まることはできるが、起きてもいないことをピンポイントで予測して取り締まるなんて出来るわけねぇだろ」

 あっさりと正論で返されてしまい、言葉に詰まる。このまま不毛なやり取りを続けても日が暮れるだけなので、大人しくついていくことにした。


 店に向かって二人で歩いている間、口を開いても生産性のない会話が続くだけであろうとミーナは口をつぐんでいる。その無言の空間を利用して、彼女は魔法を使ったときのことを思い出していた。

 奇跡的に思い描いた位置に望んだ強さでタイミング良く発動したが、普段は上手くいかない。いつもは魔法が発動しなかったり、発動しても強すぎて調節しようと弱めれば弱すぎたりして、コントロールがほとんど効かない。

 呪文、詠唱、魔法陣、と必要な知識は一字一句間違いなく覚え、間違いなく使っているはずなのに。


 考えたところですぐに結論が出る訳でもなく、諦めてぼんやりと歩いていたら、ふとヴィオルドの格好が目に入った。

 衛兵の中でも王都警備隊の制服であろう、赤と黒を基調に金縁が入ったロングジャケット。腰には小まめに手入れされている細剣。

 ミーナは初めてヴィオルドの服装をしっかりと見て、この人は本当に王都警備隊なんだなと実感した。

「そんなに見つめて、俺に気でもあるのか?」

 ヴィオルドはふざけている表情で彼女に問う。先程からまじまじと見つめられて居心地が良くない。

「何を企んでいるか知らないけど、寝言は寝てから言うものよ。さっさと店に着けばいいのに」

 ヴィオルドは実力があって隊員に選ばれ、自分とは随分違う。その事実が余計に彼女の態度を卑屈にさせた。
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