魔法の使い方
「ねぇそこの君。可愛いリボンを乗せてるね」

 レネは呼び止められて振り向く。買ってもらったばかりのリボンを誉められて上機嫌だ。にこにこしながらお礼を述べる。

「ありがとー!」
「いいえー。実はお兄さん達、狭い場所にお金を落としちゃったんだ。手の小さい君なら取れないかなって思うけど、迷惑かな?」

 舞い上がっているレネはお礼を兼ねて、快く引き受けた。人間の返報性を使った手段だ。

「どこなのー?」
「そっちの狭い路地に入ったところだよ」
「わかったー!」

 元気よく返事をして、男達が指す方向の路地へ入る。詳細な位置を知ろうとしゃがんだ瞬間、後ろから強引に口を塞がれる。レネは抵抗しようともがくが、大人の男に敵うはずもない。

 抵抗するレネをおとなしくさせようと男は髪を引っ張る。その衝撃で瑠璃色のリボンがほどけて地面に舞った。しかしレネを押さえつけることしか頭に無い男は気づかない。

「さっさとズラかるぞ」

 レネは声を出せないよう口に布を詰め込まれ、目隠しをされた。両手を金属具で拘束され、もはやなす術もない。

 一瞬痛みを感じたあと、そこで意識が途切れた。
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