魔法の使い方
六章
 ミーナが目を覚ましたのは、翌日のお昼頃だ。いつもなら店を手伝っている時間。彼女は慌てて飛び起きた。

 カーテンを開けると部屋に白い陽光が射し込む。ミーナは急いで支度して、一階へ駆け下りていった。

 店へ続く扉を開けてミーナを待っていたのは、閉じられた店に一つのテーブルを囲む見知った人達。

「ミーナ、おはよう。昨日は助かった。レネを連れ戻してくれて本当に感謝している」

 真っ先に席を立ち、ミーナの前で跪いたのはアデライドだ。その真摯(しんし)な表情に、彼女がいかにレネの心配をしていたかが伺える。

「そんなに畏まらないで? 私はやりたいようにやっただけ」

 ミーナはアデライドを立たせて笑顔で返す。

「よく眠れたかい? 今日はお休みにしているから、ゆっくりするといい」
「ありがとう、ユリウスさん」

 急いで準備する必要はなかったようだ。彼女は安堵の息を漏らす。そして別の人影へ視線を移した。

 昨日あんなことがあったばかりなのに、相変わらず何事もなかったかのような顔をしている。

「おはよう、ヴィオ。早いのね」
「鍛え方が違うからな」
「それはご苦労なことで」

 もっと疲れた顔をしていても良いのに、やはりミーナは気に食わない。けれど、それは彼女とヴィオルドの違いなのだ。きっと彼女の方がヴィオルドよりも勝っていることだって多くあるだろう。これだけが全てではない。

 彼女はもう自信がなく劣等感ばかりで余裕のなかったあの頃とは違うのだ。
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