魔法の使い方
 勢いよく店のドアを開けるミーナ。そこには高級紙から大衆紙、地方紙まで様々な層を狙った新聞社の記者達が店を囲んでいた。大きなカメラを構える者、ノートにメモを取る者達。

 その中心にはレネがいた。懲りずに少女のような格好をしている。

「あ、ミーナ! みんな、この人がボクや捕まってた人達を助けてくれた魔法使い、ミーナだよ!」

 レネの一言で全ての視線が一斉にミーナへと集中する。同時にあちらこちらからカメラのフラッシュがこだまする。

「えっと、ミーナ・フレデリーです! レネとは友達で、いてもたってもいられなくて……それで助けに行きました」

「屋敷にはどうやって潜入したんですか?」
「どうやって情報を得たのですか?」
「ソルバ商会は手強かったですか?」

 ミーナは緊張しながらも軽く自己紹介を済ませる。色んな新聞社の社員達の質問を受け、それに答えていく。向けられる賞賛の眼差し、尊敬の念。彼女が今まで手に入れることができなかったものだ。

 彼女は気恥ずかしさを感じながらも丁寧に対応していった。



 たくさんの質問に答え、人も疎らになってきた頃。レネがミーナに話しかけた。

「なんだかボク、スターになった気分! 取材されるって楽しいね!」
「私は少し恥ずかしいかな」

 頬を紅潮させ、瞳を輝かせながら満足げな表情でミーナが答えた。

「でもボク、ミーナが魔法使いとは知らなかったな」
「ユリウスとヴィオにしか話してないもの」

 彼女はヴィオルドとの最悪な初対面を思い出す。見返すと、それは茶番のようでつい笑いそうになってしまう。

「ミーナとヴィオルドって仲いいよね!」

 レネはそれを満面の笑みで言い放った。ミーナは一瞬固まる。どこからどう見たらそう思えるのだろうか。

「ちょっと待ってレネ。今なにかおかしなこと言ったよ。そう、それは君の錯覚に過ぎない」
「えー、ボクにはそう見えるんだけどなあ」

 口を尖らせて反論するレネ。不服そうな表現をしているが、何を言っても無駄だと判断したのだろう。それ以上は追及しなかった。
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