魔法の使い方
 取材が終わって店内に戻るミーナとレネ。薔薇色の頬に輝く瞳。ミーナは浴びせられる賞賛に夢心地だった。

「二人ともおかえり」

 ユリウスがココアを淹れてくれたようで、二人の席に出される。ミーナ達は喜んで取手に手を掛けた。

「ミーナは、家に帰るのかい?」

 一息ついたのを見て、ユリウスは恐る恐る声をかけた。ミーナが口を開くまでの時間が永遠のようにじっくりと流れる。無音の一瞬。その一瞬の(のち)、彼女は何事もなく答えを発した。

「そうね、今度こそ魔法の勉強をしたいし、置いてきた魔法書とちゃんとした杖を取りに一旦帰ろうかな。今ここには簡易杖しかないし」
「今、『一旦』と言ったな。一時的という解釈で正しいか? 私は何ら間違っていないな?」
「どうしたのアデル。何かあったの?」

 ミーナからアデルへの問いかけに、ヴィオルドが答えた。というよりは質問で返す。

「アンタの家出の目的は魔法が使えなかったからだろ? 今なら家を避ける理由もないし、帰らねえのか?」

 その質問に、ミーナはニヤリと笑って高飛車に言い放つ。

「あら残念。そう簡単に貴方の前からは消えてやりませんよーだ。絶対ギャフンと言わせてやるんだからね!」
「それまだ言ってるのか」
「貴方がギャフンと言うまではね」
「ギャフン」
「馬鹿にしてるの? 一泡吹かせるって意味よ!」
「あー悪い悪い」
「悪いと思ってないことバレバレ」

 いつまでも続きそうなミーナとヴィオルドの会話を聞いて、レネは「やっぱりこの二人仲良しじゃん」と心の中で呟いた。
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