魔法の使い方
 ミーナが取材を受けてすぐ次の日。あらゆる新聞社の一面を先日の事件で飾られた。

 記事にはジャメルザ伯爵家の爵位剥奪やソルバ商会の解体、それに関わっていた地方貴族や王都の顧客などの晒しリストが事細かに載っていた。

 商会側だけでなく、売られていた少女達についても記されている。既に買われた少女達も集めて、善良な貴族の寄付によって彼女達の生活を助ける施設を作るらしい。寄付者のリストも載っており、中には売名の為に寄付する者もいただろう。

 結果として資金の足しになるのだから咎められることは何もないが。

 そしてもちろんミーナの活躍も写真つきで公開されている。彼女は嬉しいような恥ずかしいような気分だ。記者との質問で答えたことやレネの言葉を元に記事を作成されているが、本物より美化されている気がしてならない。

 ユリウスが買ってきた色々な新聞社の記事を読みながら、ミーナは開店の準備をしている。貴族向けの高級紙、庶民向けの大衆紙、田舎で発行されている地方紙など、あちらこちらから買い集めてきたようだ。

 ミーナの表情は美しかった。大仕事をやり遂げた後の彼女は、自信に溢れている。瞳は輝き、頬は薔薇色、唇は艶やかな淡紅色に染まり、芯のしっかりした可憐な花のようだ。しかし決して自惚れているわけではない。

「ミーナはいつ家に行くのかい?」

 同じく準備中のユリウスが尋ねた。

「来週の予定」
「それは良かった。新聞を読んでミーナを見に来るお客さんも来ると思うから居てほしくてね。……さてと、そろそろ店を開けるよ」
「わかった! 準備オッケー!」

 返事と共に店の鍵を開けるミーナ。カチャリと音を立てて解錠される。ドアから吊り下げられたベルを鳴らしながら開けると、そこには人の行列ができていた。多くの人は手に新聞記事を持っている。

「いらっしゃいませ! 陽歌(ヒラルス・カヌトス)へようこそ!」
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