魔法の使い方
 ヴィオルドが去った後、ミーナはユリウスから仕事の詳しい話を聞いていた。客がいなくなったタイミングを見計らい、閉店の札を掛ける。

「まず、髪はまとめること。食品を扱うからね。それから愛想よくお客さんを迎えること」

 他にも注文の取り方、紅茶やコーヒーの淹れ方を教わり、ミーナの頭の中は新しく覚えることでいっぱいいっぱいになった。

「習うより慣れろとも言うし、あとは実際にやって覚えて行けば良いよ。それと仕事用の服を用意しないとね。後で近くのブティックへ行きましょうか」

 彼女はユリウスに促され、荷物を持って店の奥へ進む。目の前には二階へ続く階段。

「重いでしょう。私が運ぶよ」

 そう言いながらユリウスがミーナの鞄に手をかける。彼女は断ったが、結局彼に運んでもらった。

 上った先には幾つかの部屋があり、奥の部屋へ通される。中はシンプルなベッドと机が一つずつ置いてあり、簡素であったが手入れはされているらしく、小綺麗だった。

「ここを好きに使っていいからね」

 部屋は広くはないが狭くもなく、一人で住むのに程よい広さ。窓からはエノテラ通りを見下ろせる。相変わらず道行く人々で賑わっていた。
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