へたれライオン 卒業します
「マカロン
ちゃんと持ってきたか?」



早く作戦実行しろよ!と
毎日のように急かしてきた奏多が

ニヤニヤしながら
話しかけてきた



「とりあえず
 10個持ってきた」



「10個?

 1個試食してもらうんじゃ
 ないのかよ?」



「だって
 持ってくる間につぶれるかもしれないし
 春名に渡すときに
 落とすかもしんないじゃん

 余ったら
 奏多にもやるからな」



「春名に
 お便りを壁に貼って欲しいから
 朝早めに来てって伝えておいたから
 今、春名一人じゃん

 渡してこいよ!」



春名は教室の後ろの壁に
せっせとお便りを貼っている



奏多は
イタズラっぽい笑みを浮かべ
俺の手に
マカロンを1つ握らせると
俺の背中をドンと押した



え???


い、今ですか???


心の準備まだなんだけど・・・



と思い
2歩前に出てくるりと戻り



「奏多!ムリだよぉ・・・」

と俺が言うと

「行ってこいよ!」

と奏多に押される



そんなことを繰り返していたら



「おは~

 なに二人で?
 漫才でもしてるわけ?」



と、咲姫が俺たちの方にやってきた



マカロンを隠さなきゃと
思ったときには手遅れで



「なに?マカロン?

 誰が作ったの?」



「え?? 
 
俺だけど・・・」



「尊の手作り?

 食べたい!食べたい!」



と咲姫の声が
教室じゅうに響いてしまった



さっきまで教室には
俺たちと春名しかいなかったのに

いつの間にか俺の回りを
女子女子女子が取り囲んでいた



「弟が友達と
七夕会を開くって言うから
試しに作ってみた

笹にこうやって飾れば
可愛くない?」



王子スマイルで説明したが

『こんな重いマカロン
笹につけれねえし
もっとマシな嘘なかったのか』と
自分に呆れる



女子たちは
そんなの全く気づいてないらしい



「これ尊くんが作ったの?」


「私にもちょうだい!」


「私にも!」



あっという間にマカロンは
全て取り巻き女子の胃のなかに
おさまってしまった



何度も失敗して
苦労して作ったんだけどな・・・



「尊くんって
お菓子作るの上手だったんだね」


「弟のために作ったんでしょ
優しいよね!」


春名のためにお菓子を作って
俺のギャップにキュンキュンしてもらう
この作戦は

春名以外の他の女子達を
今まで以上にキュンキュンさせてしまう
結果になってしまった



なんか
俺をとり囲む女子の数が
増えているような・・・




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