へたれライオン 卒業します
結局、30分待っても
誰も理科室には来なかった
『来るわけ……
ないよね……』
あのクッキーが
私のために作ってくれたものだったらな。
そんな風に
1パーセントでも期待をして理科室に来た
自分が惨めで。
心が苦しい。
荷物を持ち
理科室を出ようとした瞬間
「何かあった?」
柔らかい男性の声が
「え??」
「さっきも理科室の前を通ったけど
辛そうな顔をして座ってたから
気になって」
優しく微笑みながら
ゆったりと話すその人は
女子たちのなかで
ファンクラブがあるくらい人気の……
「せ、生徒会長?
なっ、なんでもないです」
と強がって答え
バックをもって理科室を出ようとしたとき
急に
生徒会長に腕をつかまれた
「え?」
「俺は遠野直也。
3年2組だから
辛いこととか悲しいことがあったら
いつでもおいで」
なんで、陽だまりみたいな温かい笑顔で
そんな優しい言葉をかけてくれるんですか?
「あと、会長は固っくるしいから
直也って呼んで
ね、かすみん」
「か……かすみん???」
「嫌だった?
かすみんって呼び方、
可愛いと思うけど」
「いやじゃないです
ただ……そんな呼び方……
されたことなくて……」
生徒会長は
目を細めて優しく笑った
でもなんで
私の名前を知ってたのかな??