香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「王都の街でクルミと買い物をしていたら……気がついたら彼女が消えていたんです。今日のお昼も様子がおかしかったし、噂ではアレン様との結婚が嫌で家出をしたと聞いてますから、ひょっとして……城から逃げ出したのでは?」
エマ王女の説明を信じるほど俺達は愚かではない。
「どうしてクルミと買い物に行った?彼女とはそれほど仲がよくなかったように見えるが?」
ギロッとエマ王女を見据えれば、彼女は「そ、それは……彼女が塞ぎ込んでいたようなので、買い物に誘ったのですわ」と俺から視線を逸して言い訳する。
同盟国の王女とはいえ、なんて愚かな女なのかと呆れた。
「誘ったねえ。かどわかしたの間違いだろ?クルミが乗った荷馬車は王都を出たと俺の間者が伝えて来た。行き先はどこだ?素直に白状した方が身の為だ。クルミになにかあれば、お前を牢に入れることになるが」
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