香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
いや、今は考えるな。
「クルミ、飛び下りろ!」
クルミに向かって叫ぶが、彼女は「無理〜」と首を大きく横に振る。
二階部分も火が回っていて怖いのだろう。
だが、このまま躊躇していたら焼け死んでしまう。
「大丈夫だ。俺が絶対に受け止めるから!」
声を張り上げ彼女を説得する。
その時、一階の部分がガタガタと崩れた。
「わ~、きゃあー!」とよろけながら叫ぶクルミ。
ヒヤッとしたがなんとか建物がもって、そこにいた三人は無事だった。
「お嬢ちゃん、無理無理言ってる場合じゃないぞ」
ルーカス王太子がクルミの身体を持ち上げた。
「きゃっ、何するんですか!」
クルミが驚いて顔を強張らせるが、ルーカス王太子は彼女の質問には答えず、俺に真剣な眼差しで告げた。
「アレン王太子、全力で彼女を受け止めろよ!」
荷袋のようにクルミを俺の方に投げ飛ばす彼。
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