香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
9、ハーネスの国王
火事でパニックになっていたらアレンの声がした。
「クルミ〜!」
嘘。
幻聴だろうか?
でも、確かに彼の声。
窓に近づき外を見れば、彼がこちらに目を向けている。
アレンだ!?
「アレン王太子じゃないか?敵国まで助けに来るなんて、クルミちゃん相当愛されてるね」
いつの間にかルーカスが横に来ていて、フッと微笑すると、腕で窓ガラスを叩き割った。
「ここから逃げるよ、クルミちゃん」
軽い身のこなしで彼は窓の外に出て私に手を差し出す。
火の手が迫っているのに、ルーカスの手を取るのを躊躇った。
私がこのまま助かったら、アレンと一緒にパルクレールに戻らなければならない。
だが、そうなってしまうと、アレンはエマ王女と結婚できなくなる。
なぜアレンはここに来たの?
私が……親友の妹だから?
でも、義理で助けに来てもらっても全然嬉しくない。
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