香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「無理〜」
首を左右に振って拒否するが、彼は諦めない。
「大丈夫だ。俺が絶対に受け止めるから!」
真っ直ぐに私を見つめるそのサファイアの宝石のような瞳。
あの時と……彼と初めて会った時と同じ目だ。
木から下りられない私に彼は同じようなことを言ったんだよね。
その目を信じて飛び込みたくなった。
でも……私がいてはみんなが幸せになれない。
私はここにいちゃいけない人間。
迷っていたら、突然下の部分がガシャッと音を立てて崩れ始めた。
「わ~、きゃあー!」
し、死ぬ〜!
お母さん、お父さん、先立つ不孝をお許しください!
ギュッと目を瞑ったら、足元がぐらついた。
だが、全壊せず、なんとか持ちこたえる。
ヒヤッとしてホーッと息を吐く私達。
「お嬢ちゃん、無理無理言ってる場合じゃないぞ」
なにを思ったかルーカスが突然私の身体を米俵のように持ち上げて悲鳴をあげた。
「きゃあ〜!ルーカス、何するんですか!」
目の前に火が迫っていて、慌てる私。
パニックになりながらルーカスに文句を言うが、彼は私を無視して、アレンに向かって叫んだ。
< 170 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop