香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか？

「アレン王太子、全力で彼女を受け止めろよ！」
ルーカスにボールのように投げられ私の身体は宙に浮いた。
だが、私には羽はない。
火の中に落ちる〜！
「キャ～！」
放物線を描くように落下する私の身体をアレンが両手を大きく広げて受け止めようとする。
「クルミ！」
熱風と共に火がこちらに迫ってきて、怖くて目を閉じた。
火に包まれて死ぬ〜！
今度死んだら、私は本当に死ぬのかな？
それとも、目を開けたら、全部夢だったって……元の世界に戻っていたりして。
そしたら……アレンやヴィクターお兄様……それにここで会ったみんなのこともすぐに忘れてしまうのだろうか？
ガシッと逞しい手がしっかりと私を抱きしめるのを感じた。
それはアレンの手。
だが、落下の衝撃が強くて、彼と一緒に地面に倒れ込んだ。
「大丈夫か、クルミ？」
耳元でアレンの声がして、その温かい手が私の頰に触れる。
私……生きてる？
「アレン？」
ハッとして目を開ければ、彼が心配そうな顔で私に尋ねた。