香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
アレンは私の手から香油と金貨の入った袋を奪い、サイモンに手渡す。
「うわっ、重い。何入ってんだ?」
荷物を受け取ったサイモンは驚きの声を上げた。
ガラスの容器がいっぱい入ってるから、見た目よりはズッシリした重さがある。
「香油です」
持ってもらうのが申し訳なくて小声で答えたら、彼はどこか呆れ顔で言った。
「これだから、女ってやつは。美容にしか興味がねえ。なあ、そう言えば、ヴィクターの妹と婚約が決まったって?」
サイモンが何か思い出したように話し出すが、その話題に耳がダンボになる。
……私のことだ。
動揺せずにはいられない。
ひょっとして、私をおんぶしているこの人が王太子殿下!
「ああ。そうみたいだな」
アレンは他人事のように頷く。
やっぱり王太子なんだ。
きっと望まぬ婚約なのだろう。
可哀想に……じゃない!?
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