香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「大きな声を出すなよ。クルミが聖殿で消えたら大騒ぎになるだろうがやみくもに他の異世界の扉を探すよりはいいだろう?」
「それはそうですけど……アレンに迷惑をかけるし……みんなに結婚するって思わせて元の世界に帰るわけですよね?罪悪感が……」
「こちらの世界の者のことは心配するな。実は、ヴィクターもクルミが異世界から来たことに気づいている。お前が異世界に帰れるよう国王に俺との婚約の話を進めたのは彼だ」
ヴィクターのことを話せば彼女は驚いた。
「お兄様が?」
そう言って大きく目を見開くが、すぐにその瞳に暗い陰を落とし独り言のように呟く。
「……ああ、そうですよね。私が元にいた世界に帰れば、本当のクルミさんがこちらの世界に戻って来るかもしれない」
クルミ?
どうしてそんな悲しそうな顔をする?
心配になってその頰に手を添え、目を合わせて尋ねた。
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