香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
それに、彼は頻繁に軍を率いて戦地に赴いていると聞いている。
パルクレール国が豊かなのは、この王太子殿下の功績が大きいらしい。
彼が軍を率いるようになったこの五年で領土が増え、物流が活発になったというのだ。
「最初から。村の娘にしては身なりが良すぎるし、ヴィクターから『妹が婚約が嫌で家出するかもしれない』と聞いていたからな」
「……お兄様、鋭い」
つい思ったことを口にして「あっ」と口を押さえる。
王太子殿下との婚約を嫌がって家出するなんて、不敬もいいところで……。
「私……処刑されるんですか?」
恐る恐る確認したら、彼は「さて、どうしようか?」と面白そうに目を光らせる。
「……こ、殺すなら一瞬でお願いします」
怯えながらそう訴えたら、アレンがククッと肩を震わせた。
「冗談だ。本気にするな。それと、君の貞操は今のところ無事だ」
< 26 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop