香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「え?あの……その……美人で……優しい方とか?」
「ひとつ指摘しておこうか。今俺の目の前にいる女性もとても魅力的だが」
アレンは私の目を捉え、殺し文句を口にする。
うわ〜、この人、絶対に女ったらしだあ。
この容姿なら仕方ないかもしれないけど、私とは全く縁のなかったタイプの人間だよ。
「真顔で冗談を言わないで下さい。私は真剣にお願いしているんです」
「冗談ではない。君はとても綺麗だ、クルミ」
名前を呼ばれて心臓がバクバクすると同時に、彼が私の顎を掴んで唇を重ねてくる。
逃げるという考えも頭に浮かばず、アレンにキスされてーー。
最初に思ったのは、唇に何か柔らかいものが触れたってことだけ。
それが、アレンの唇と認識したのは、彼がキスを終えてから。
「何を固まっている?」
落ち着き払った彼の質問にあたふたしながら答える。
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