香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
女を虜にするようなその低く甘い声。
でも、本気で私を口説いているわけではない。
「キスは恋人同士がするものです。ただ面白がってするものではありません」
彼の目を真っ直ぐに見据えて言えば、彼は口元に笑みを称えた。
「ならば、互いに好きになれば問題ないわけだ」
これは多分、彼にとってゲームのようなものなのだろう。
私がアレンのことを好きになれば、彼の勝ち。
「そんなことは一生ないと思います」
私は元の世界に帰るもの。
そしたら、もう彼とは会わなくなる。
「大した自信だ……うっ!?」
突然、アレンが頭を押さえて顔をしかめた。
「どうしたんですか?」
その様子に驚いて声をかけると、彼は「ただの頭痛だ。大したことはない」と言ってベッドを出ようとする。
「ベッドに横になって」
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