香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
彼が脱衣所を出て行くと、クルミと向き合い、彼女の衣に手をかけた。
「じゃあ、服を脱いで」
「あの……本当にひとりで入れますから」
俺の手を払って、彼女は襟元をギュッと掴む。
「勘違いするな。俺も風呂に入りたいんだ。この湯浴み着に着替えろ」
棚にある衣を取って手渡すと、彼女は「湯浴み着?」と驚いた顔をした。
「裸で入りたいならそれでもいい。目を瞑っていてやるから、十数えるうちに着替えろ。一……」
目を閉じて数を数え始めたら、クルミは慌てた。
「ぎゃっ!ちょっ……まだ準備出来てない!」
ドタドタ物音がする。
きっとあたふたしながら着替えているのだろう。
「……七、八、九、十。もう着替え終わったか?」
ゆっくり目を開ければ、彼女がゼーハー息を吐きながら腰紐を結んでいた。
「もう着替える時間が短か過ぎますよ」
湯浴み着は膝上まで丈がある。
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