香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「でも……殿下の方が私より身分が高いでしょう?」
俺の言葉にクルミは戸惑いの表情を浮かべる。
「夫婦になるのに身分なんか気にするな」
気遣わないように言うが、彼女はあまり納得していない顔で返事をした。
「……はい」
身分のこともあるが、それ以前に俺と結婚する気がないのだ。
普通の貴族の娘なら、王太子と結婚出来るというだけで飛び上がって喜ぶというのに、彼女は変わっている。
「あの……アレンは……戦うのが怖くなったりしないんですか?そんな傷を負ってもまた戦地に赴くなんて、私ならずっと城に籠もってます」
クルミは躊躇いがちに俺の背中の傷に触れた。
「国のためだと思えば怖くはない。それに、しばらくは他国と戦うことはないだろう。領土を拡大し続ければ、いずれ国は滅びる。広大な領土を統治するのは難しい。土地によって言葉や信ずる神が違うからな」
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