香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
「人を信じることも国王の大事な仕事ですよ。私……昔、子猫を助けようとして木に登ったことがあったんです。そしたら下りられなくなって、男の子が現れて『しっかり受け止めるから信じて』って……。それで、助かって、その子からこのネックレスをもらったんです。猫を助けたお礼に」
クルミが笑って見せてくれたのは、俺が彼女にあげたネックレスだった。
やっぱり彼女は異世界から来たのか。
だが、会ったのが俺とは気づいていないらしい。
「信じるって大事だと思います」
にっこり笑う彼女の頬に手を伸ばし、「俺もそう思う」と口にする。
なんだろう。
彼女にもっと触れたい。
顔を近づけて彼女に口づけようとしたら、「セシル様〜、お待ち下さい〜!今、アレン様が〜!」
侍女の声がして、次に近くで姉の声がした。
「あら、お楽しみ中だったのね。邪魔しちゃってごめんなさい」
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