香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
クルミの頰を優しく撫でると、姉に視線を戻す。
「ええ。そうですね」
「姉である私にその女性を紹介してくれないの?」
俺を見据えて口角を上げる姉に、チクリと釘をさす。
「この場で紹介するのは変でしょう?心配しなくても結婚式には呼びますから、そう気をもまないでください」
クルミを抱き上げると、風呂から上がった。
「え?アレン?ちょっと下ろして!」
クルミの抗議を無視して姉に告げる。
「ごゆっくり」
姉は俺とクルミを見てフッと微笑した。
「今回、あなたに会わせろって煩いから義妹も連れて来たの。適当に相手を頼むわ」
また面倒なことを。
義妹というのは、姉の夫であるオスロン王国の国王の妹、エマ王女。
俺より三つ年下で、他の国の王族から求婚されているようだが、姉の話では俺に惚れているらしい。
可愛い顔をしているが、俺の好みではない。
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