香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
彼女に反論できる人間なんてアレンぐらいだろう。
国王さまも王妃さまも優しくて穏やかな人柄で見ていると和む感じだけど、セシル様とアレン様はなんというかオーラがすごくて神々しい。
結局断わることは出来なかった。
「ところで、朝、浴場で会った時、ネックレスが見えたんだけど、どこで手に入れたの?青い石が綺麗だったから気になって」
セシル様の質問に昔を思い出しながら答える。
「それは子供の頃、子猫を連れた金髪の男の子にもらったんです」
「ふーん、子猫を連れた金髪の男の子ねえ」
何か考え込むように呟く彼女。
「どうかしました?」
私がそう聞くと、セシル様は小さく頭を振った。
「ううん、なんでもないわ」
ドアまでセシル様をお見送りすると、ソファに座ってハーッと息を吐く。
なんだかますます私が逃げられない状況になっているような気がする。
うーん、このままズルズルここにいたら本当にアレンと結婚する羽目になっちゃうよ。
私はこの世界の人間じゃないのに……。
そのことが私を苦しめる。
異世界に私ひとり……というのがすごく寂しくて、辛く感じる。
< 76 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop