香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
アレンから離れ、脱兎のごとく彼の部屋から飛び出した。
自分の部屋に戻ると、ドアに持たれかかりゼーハー息を吐く。
「まさかすぐに戻って来るとは思ってなかった。心臓に悪すぎ」
あ~、どうしよう。
アレンの部屋にあるかどうかだけでも確かめたい。
彼の部屋になければ森に探しにいかなくてはならないもの。
あれは私がこの世界の人間ではないという証。
私はクルミ・オブ・ラフォリアでなく、山本胡桃なのだ。
なくしてはいけない。
あれがなかったら……自分の存在が自分でもわからなくなる。
絶対に必要なのよ。
もうなりふりなんか構っていられないわ。
アレンにスマホのことを話すことになっても見つけないと。
そう心を決めてもう一度アレンの部屋に行く。
「ネロ、お邪魔するわね」
ドアの前にいるネロに一言断ってドアを開けようとしたら、ネロが私のドレスを噛んで引き止めた。
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