香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか？

「あの……その……」
その様子でわかった。
彼女こそ俺を誘惑しに来たのだ。
お手並み拝見とばかりにエマ王女の出方を待っていたら、彼女が突然俺に抱きついた。
「キャッ！蜘蛛が！」
蜘蛛……ねえ。
どこにもいないが。
エマ王女の身体を剥がそうとすると、勢い良くドアが開いてクルミが現れた。
俺とエマ王女を見て驚きで目を見張ったクルミ。
このタイミングで現れるとは……。
なんて言おうか考えていたら、クルミがひどく慌てた様子で口を開いた。
「お邪魔しちゃってすみません！」
そう言ってバタンとドアを閉めた彼女。
絶対にエマ王女とのことを誤解したな。
ガバッとエマ王女を引き剥がせば、彼女は意地悪く笑った。
「ドタドタと騒がしい娘ですわね。あんな女、アレン様に相応しくないですわ」
エマ王女が俺の腕に慣れ慣れしく触れたが、俺は冷たくその手を振り払った。