香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
そんなロイドを置いて、クルミの部屋とは別の方向へ歩き出す。
「あれ?彼女の部屋に行くんじゃないんですか?」
額を押さえて聞いてくる彼にぶっきら棒に答えた。
「食事の前に父上とちょっと話をしてくる」
ロイドの妄想で気が変わった。
婚約者の色っぽい姿をあいつに想像されるのは面白くない。
それは俺だけが知っていればいいこと。
クルミとは食事の後ゆっくり話そう。
父上と話した後、食堂に行って俺の両親、姉、エマ王女、クルミの六人で円卓で食事をするが、クルミがちょっと挙動不審だった。
席は国王と王妃が並んで座り、王妃の横から俺、エマ王女、クルミ、姉上の順番。
クルミは俺とエマ王女を何度も見て、俺と目が合うと"しまった"というような表情をして顔を逸らす。
やっぱりエマ王女との仲を誤解しているな。
父上から昼食の時はかなり緊張していたと言っていたので、彼女が楽しめるようヴィクターの話題でも振ろうと思っていたのだが、その必要はなかった。
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