まさか私が………
公園に着いた後、かすみとすみれは、友達に誘われて、遊びに行った。俺達は、かすみ達が遊びに行っている間、日陰のベンチで休むことにした。
俺はこの二人きりのときに少しでも距離を縮ませたくて、気づいたらさゆりに話しかけていた。
「なぁ、さゆり。」
「何ですか?翔馬先生。」
せっかく仲良くなれたと思ったんだけど、なんか、先生と呼ばれると、まだ距離感があるな。
「あの、学校以外で会うときは、翔馬先生って呼ぶのやめてくれないか?」
「じゃあ、なんて呼べば良いんですか?」
さゆりは、少し困ったような顔をしていた。
俺は、少しだけ意地悪をすることにした。
「翔馬って呼んで?」
「無理無理、無理ですっ!!」
さゆりは首を横に振りながら恥ずかしいそうに言っている。
可愛い! 可愛い過ぎる!!
もう少し意地悪しても良いよな。
俺は、さゆりに近づいて、耳元で囁いた。
「10秒以内に言わないと、キスすんぞ。10、9、8、……」
そして、俺は顔を近づけると、さゆりは緊張からか、茶色の大きな瞳に涙を浮かべながら、ぎこちない感じで言った。
「しょ、しょしょ翔馬さんっ!!」
ヤバい!どうしよう?可愛いんだが!というか、俺、さっきから心の中で可愛いしか、言ってねぇ。
俺は、この気持ちをごまかすように、さゆりの頭を撫でた。
本当は、翔馬って呼んでほしいところだが、今日はもう満足したから、これで勘弁してやろう。
なんて、思いながらさゆりを見ると、頭を撫でられて気持ち良さそうにしている。
「良くできました。」
チュッ
気づくと、俺は、さゆりの額にキスをしていた。
うん?俺って、こんなにキザな奴だったっけ?いや、違う。
今まで俺は、いろんな女に言い寄られても、しゃべりもしないのに。ましてや自分から触れたいとも思ったことはない。
なのに、俺はこいつと出会ってから、調子が狂う。自分の知らなかった自分が、次々と出てくる。本当に困ったものだ。でも、こんな自分も悪くないと思う。
そんなことを考えていたら、かすみとすみれが友達と遊び終えて戻ってきた。そして、緊張して顔を赤くしているさゆりを見て、心配していたので、俺たちは帰ることにした。
かすみ達にさゆりが顔を赤くしている理由を聞かれたときは、さすがに、本当のことを言うのは恥ずかしいので、適当に嘘をついてしまった。