ライラック
『…時刻は午後11時25分を過ぎ、このラジオも残り時間もわずかとなってきました。
毎回早いもので…』
僕は今日本屋で購入した漫画を読みつつ、スマホでラジオを聞き流していた。
この聞いているラジオは、本物ラジオではない。素人でも、誰でもできる、俗に言うラジオ型配信アプリだ。
話すお題は通常のラジオと違い、縛られていない。
配信するパーソナリティと呼ばれる方の独断と偏見で毎日お題が変わる。
時に前日の続きを話したり、
時に○○回放送記念だったり。
同じ時間にも他の方もラジオ配信をしていらっしゃる。
だが僕は、この時間帯に毎日3時間ほど配信しているHalさんという人のラジオを聴くのが僕の日課になっていた。
『…という事で、今日はこの曲を聴きながらお別れとなります。最後まで聴いていただき、ありがとうございました。
本日最後の曲は最近人気上昇中、話題のぴゅあ☆らぶ!から、恋ノウタです。どうぞ。』
そう言ってHalさんの声は聞こえなくなり、かわりに音楽が流れ出す。
この音楽のチョイスも、全てはパーソナリティの人が決めている。
このアプリの人口は元々多くはないが、
それでもHalさんはこのアプリ内で一、二を争う程、人気がある。
現に、配信が始まった時に通知が来るようにしている人が多数いるからだ。
普通の民間放送のラジオはなかなか聞く機会がなければ、自ら率先して聞こうとは思えない。
車で流れているのを流し聴きする程度だ。
しかし、このアプリのラジオ配信は既に日課になるほどまで、聞いていた。
スマホ1台でできる手軽さゆえに、ハマったのかもしれない。