ライラック
「柊真?朝よ〜!
早く起きないと遅刻するわよ!」
お母さんが僕の名前を一階から叫ぶ声でゆっくり起きる。
僕は眠い目を擦りながら体を起こす。
スマホの電源を入れようとする。が、画面は反応しない。
くそ、昨日の夜充電するの忘れてそのまま寝たのか。最悪な朝だ。
とりあえず、ピコンっと充電器のコードとスマホを繋げ、一階に降りる。
お父さんはソファで新聞を読みながらコーヒーを飲んでいて、お母さんは忙しく弁当の準備をしていた。
ドタドタと二階で走る音が聞こえるのは、きっと四つ年下の妹の彩芽も寝坊したからに違いない。
血は争えないのだな。
僕はそのまま洗面台に向かい、顔を洗い、歯を磨く。
ふぁ、あぁ眠い。
そういえば昨日担任が今日の朝に小テストするって言ってたっけ。
なんにも勉強してないや。最悪な朝だ。
最悪な朝には最悪なことが何度繰り返されるんだろう。
朝食べようと思って、昨日の夜に買ってきたはずの僕の大好きなヨーグルトは妹に食べられるし、
焼いたはずのパンは微妙に焦げたし。
なんかついてないんだよなぁ…。
焦げた部分のパンをゴリゴリと削り、口に運ぶ。
もう黒い部分はないのに、口の中に広がる苦い味。
あぁ。最悪な朝だ。
最悪という字は『最も悪い』と書く。
今日の『最も悪い』ことは毎分更新されていくのか。
なぜ朝からそんなことを考えなくてはらないのか。
それこそ、最悪な朝だ。