ライラック
高校生活三年目ともなれば、全ての物事は大抵は対応に困ることは無い。
例えば朝の小テストを前日勉強していなくても、
電車での通学時間である程度は頭に入るし、
その電車が遅延していて、小テストを受けることがなくなっても、
『今までの勉強時間を返せ』と悔しがることも無い。
前日勉強してないから合格点取れるかどうか危うかったから、むしろ喜ぶべきだ。
朝学校に着くと一限目の途中だった。
僕と同じ時間に乗っている人以外はちゃんと授業に出て、テストも受けたのだろう。
一限目。現代文。
梶井基次郎の檸檬。
日々を憂鬱に過ごしていた主人公が丸善で積み上げてた画集に爆弾に見立てた檸檬をひとつ置いて、爆破させるっていうお話。
僕は考える。
檸檬を爆弾に見立てるなら、きっと手榴弾だ。
例えばそれが林檎だったら?
林檎は手榴弾どころか爆弾には見えない。
じゃあバナナは?メロンは?スイカは?
きっとどれも、上手く爆弾には連想できないだろう。
果物に固執することなく、野菜でも考えてみる。
形は似ている茄子なんかはどうだろうか。
熱を帯びた主人公の体を冷やせる力はあるだろうか。
僕だったら風邪をひいてる時に茄子が出てきたら皿ごとひっくり返しそうだ。
流石にしないけど。
きゅうりや人参やレタスやきゃべつ、
きっとどれをとっても爆弾にはならない。
そう考えると、爆弾に見立てられる檸檬に行きついた作家さんはほんとに凄いんだと思う。