ただ愛されたいだけなのに


 正紀:送らなかったのには、理由があるんだ。
    俺はもうお前の望む俺じゃない。今まで
    俺はお前の全てを受け入れようと努力し
    自分を見失い、俺自身を犠牲にしてきた
    それが今はお前の望むひ弱な俺ではなく
    お前への気持ちがそれほど強くはない俺
    になってしまった。だから情でメッセー
    ジを送って無駄に期待させたくなかった
    その期待にたいして応えられないからだ
    ほんとうにすまない。


 わたしは声に出して笑った。正紀をここまでうぬぼれさせてしまったのは、わたしなの? この返事を見るかぎり、正紀が感情で動いているということが手に取るように分かる。
『情でメッセージを送って』なんて、たいしたもんだわ。


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