ただ愛されたいだけなのに


 一限の五十分の間に、五十回ほど時計を見る。残り十分になると幸せで、残り三十分ある時のわたしの魂は奈落の底へ落ちる。今ちょうど奈落の底へ落ちたところだ。

 あーん、楽しみがないと人生ってこんなにも退屈なのね。でも少なくともこのくそったれ学校さえ終われば、今より百万倍も幸せになれる。

 ようやく授業が終わった。お昼休みに突入。わたしはそそくさとバッグを持って外に出た。毎度のことながら、お昼休みのたびに外に出るなんて面倒くさすぎて苦痛。だけどあそこにずっといると思えば、全然マシ! 鼻水が垂れてることも気づけないくらい寒くて全身が麻痺してしまいそうだけど、それでも外の方がマシだ。

 お昼を過ごすスポットは二つ。アパート周辺の駐車場か駅のベンチ。居心地はベンチの方がいいけれど、片道で六分かかる。今日は駐車場のブロックに腰をおろした。普通車のおかげで風はしのげるけれど、気温は変わらない。サンドイッチをかじりながらスマホをいじる。勇太って、平日の昼間はメッセージをくれないのね。わたしと違って仕事だからかもしれないけど。学校が終わったら、また仕事を探さなくちゃいけない——そう思うと、食欲が失せた。


< 129 / 167 >

この作品をシェア

pagetop