ただ愛されたいだけなのに


 バスタイムが好きになってきたわたしは、湯船の中で牛乳をゴクゴク飲んでいた。お湯もミルク色で、シャンプーやリンスのボトルもミルク色でミルクの香り。
 イライラばかりしてしまう心を、ミルクで真っ白に染めるための貴重なバスタイム。

 そんなひと時を邪魔するように、脱衣所でスマホがメッセージのお知らせを何度も届けている。
 わたしは仕方なくお風呂から上がり、右手にドライヤーを、左手にスマホを持った。


 勇太:夢ちゃーん♡電話しよう
 勇太:おーい
 勇太:そういうことか
 勇太:電話したくないならそう言えばいいだろ


「ウザっ!」
 思わず湯船にスマホを放り投げそうになった。
「まだ見てすらいないっての!」
 わたしはイライラしながら返事を送った。


 夢 :ネガティブすぎ。付き合ってるわけでも
    ないのにしつこいんだよ!
    忙しいから電話は無理。てかもう寝るし
    睡眠の邪魔しないでね‼︎

 イライラする。お風呂でさっぱりしたばっかだってのに、怒りで汗をかいちゃいそう。
 けれどもお風呂場を出ると一気に体温が下がった。暖房を入れるのを忘れてた。
 わたしは髪をタオルで巻いて、冷たいベッドのなかにもぐりこんだ。寒くて歯がガチガチになるけど、頭のなかのイライラはちっとも冷めないまま眠りに落ちた。




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