ただ愛されたいだけなのに
「明日は安全衛生の訓練を行いますので、暖かい格好をしてきてください。外は寒いですからね」
ファック! 横川のおじさんに、心の中で凄まじいほどのブーイングを投げかける。
わたしが訓練に通う理由が、ひと月前と劇的に変化した。前は正紀と会うための旅費稼ぎだったけれど、今はただ、生活費と資格取得のため。
ていうか、パソコンの訓練でしょ? どうして安全衛生だとかビジネスマナーだとかを習わなくちゃなんないのよ。
分厚いテキストが入った重たいバッグを、地面に引きずりながら駅の前を帰る。こんなに寒いベンチでお昼を食べるのも今週いっぱいで終わり。けれど嫌な一週間って、一年間のように長く感じられる。
女がカバンを引きずりながらこの世の終わりかのような表情を浮かべているのが、すごく醜いとでも言いたそうな顔で、タクシー運転手や中学生が見つめてくる。やぁね、その顔、鏡で見たらどう? 眉間にシワを寄せて唇の端を下げて、まるでうるさい姑みたい。
「あの……大丈夫ですか?」
ワオ、とうとう話しかけられちゃった。