ただ愛されたいだけなのに
「あ、はい。大丈夫です」
わたしは言いながら振り向いた。
ワオワオワ——オ!
わたしのどストライクの男性発見。健康的な肌色に、くっきり二重まぶたの若々しい——けれどガキっぽくない——色素の薄い唇! 鼻が《亀梨和也》にそっくりなところまでわたしのタイプ! こんな人が、わたしに何の用なの⁉︎
「バッグ、引きずってますよ」
イケメンは声すらもイケてる。
「え? あ、はい。気づいてます。アハハッ」
わたしってば、どうしてアハハッて笑っちゃうんだろう。
「あ!」
イケメンは何かに気づいたような顔で、わたしのことを上から下までサラッと眺めた。
なになになにー⁉︎
「毎日ここ通ってますよね」
「あ、はい。通学路なので……」
わたしは風に煽られる横っ毛をおさえつけた。
「自分、そこの美容室で働いてるんで、毎朝見るんですよ」
そう言ってにっこり笑顔を浮かべるイケメン。「学生ですか?」
「んー、一応は学生……ですかね」
わたしは自分でも情けないくらい、しどろもどろに答えた。
「パソコンを習ってるんです」
「へぇ。偉いね。資格とか?」
イケメンは感心したように目を開いた。
「え、ああ、はい……美容師って大変そうです」
なんだかもじもじしちゃーう。