ただ愛されたいだけなのに
想像の中のわたしは、茶髪の背の高いカッコいいやり手の弁護士と手を繋いでいる——やっぱり保育士にしよう。彼は頭がよくて、わたしの扱い方を心得ていて、いつも長い目で見てくれる。わたしが怒っていたら時間をくれて、いじけていたら構ってくれる。そしてもちろん、いつだって側にいてくれる——。
そんな男の人は存在しない。いたとしても、わたしなんかとは付き合ってくれない。結局は、類は友を呼ぶっていうやつなんだ。わたしはまだ子供で、正紀も子供。歳だけとった妖怪。なんにしても、正紀がわたしの理想像じゃないことは確か。わたしより経験が浅くて——社会のことはほとんど——未経験。男女の付き合いもない。
わたしはようやく返事をうった。
夢 :見た目が関係ないとか言うなら、黒髪の
女が好きだとか、黒いジャケットを着て
みろとか言うのはまちがってると思うん
だけど。わたしが言ったら、正紀は極端
に落ち込むじゃん。わたしはその逆で不
機嫌になる。お互い様なことしといて、
えらそうなことばかり言わないで。あと
性格磨いてるとか言うけどたびたびネガ
ティブになって褒めさせるのやめて。