ただ愛されたいだけなのに



 スマホはベッドに寝かせて、夜が過ぎてしまう前にシャワーを浴びた。バスタブにお湯を張り、アップルパイの香りがするラッシュを投げ入れた。

 わたしを含めて、本物のアップルパイになってしまえばいいのに。甘くて美味しいものになりたい。わたしは甘い甘い女の子になりたい。そして甘い生活を送りたい……。

 三十分お湯に浸かってから脱衣所に上がった。このまま本物のアップルパイになってしまったら、いつの日かたずねてくる大家さんに、腐って虫に食われまくった姿を見せることになってしまいそう。

 濡れた髪のまま携帯を持って、ソファに腰かけた。画面を開くと、返事が返ってきていた。


 正紀:それは悪かった。だけどよ、お互い様な
    らそこまで俺を責められるのか?
    でもまぁ、俺の発言も軽率すぎた。いい
    気はしないよな。ごめん。


 すこし引っかかるけれど、バイトのストレスを解消したい。ラブラブな状態にはやく戻りたい。
 わたしは首をふって髪を背中にはらい、返事を打ちこんだ。


 夢 :だから、お互いさまなの。
    わたしもごめん。

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