足立古書堂 謎目録
ともあれ用を済ませよう、ということでドアを開ける。

カラン、とベルが鳴った。

一歩入るとたちまち古い紙の匂いに包まれる。

二人は本棚の奥にあるカウンターに向かった。

友人はスポーツバッグを本棚にぶつけないように四苦八苦している。

「あの……足立さん」

なんとか狭い通路を通り、意を決して、という声で彼がカウンターにいた女に話しかける。

黒髪を後ろに流し、紺色の服を着ている彼女は、古い文庫本を読んでいた。

「なにかな」

客に向かってその訊き方はどうよ、と高木は思う。
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